コーチングとメンタリング

コーチングは、対話や質問を通じて相手の気づきや考えを引き出し、目標達成を支援する方法です。メンタリングは、経験豊富な人が助言や相談を通じて、相手のキャリア形成や精神面も含めた成長を継続的に支援する方法です。

最終更新日:2026年10月5日

このページで覚えること

このページでは、次の3点を押さえます。

  • ティーチング、コーチング、メンタリングの違い
  • コーチングで活用するGROWモデルの4段階
  • 相手の状況や目的に応じた、人材育成の方法の使い分け
塚口理央

塚口理央

今回は、コーチングとメンタリングについて学習します。

バロン

バロン

人を育てる方法の話ですかな?

塚口理央

塚口理央

はい。バロンくんは、誰かに仕事を教えた経験はありますか?

バロン

バロン

昔は召使いが何人もおりましたからな。新しく来た者に、お茶の出し方などを教えたことはありますぞ。

塚口理央

塚口理央

なるほど。仕事の手順を教えていたのですね。

バロン

バロン

特に、タコの唐揚げは熱々のうちに出すよう、しっかり教えておりましたぞ。

塚口理央

塚口理央

そちらは、ずいぶん熱心に指導していそうですね。

バロン

バロン

衣のカリッとした食感が大切ですからな。

塚口理央

塚口理央

そのように、知識や技術、仕事の手順などを直接教える方法を、ティーチングといいます。
経験の浅い人に、基本的な知識や正しい手順を身に付けてもらうときに役立ちます。

バロン

バロン

それなら、バロンもティーチングをしていたのですな。

塚口理央

塚口理央

はい。ただ、人を育てる方法はそれだけではありません。
本人が自分で工夫できるように手助けをしたり、仕事への不安や将来の相談に乗ったりすることも大切です。

バロン

バロン

たしかに、いつまでも一つ一つ指示をしているわけにもいきませんな。

塚口理央

塚口理央

そこで役立つのが、今回学ぶコーチングとメンタリングです。

バロン

バロン

なるほどですぞ。
今は召使いもおりませんが、いつかまた人に仕事を任せるときのために、学んでおきたいですぞ。

塚口理央

塚口理央

とても良い心構えですね。

コーチング

塚口理央

塚口理央

それでは、コーチングから順番に説明していきます。
コーチングは、対話や質問を通じて相手の気づきや考えを引き出し、目標達成を支援する方法です。
本人が自分で考え、行動できるように支えることを重視します。

バロン

バロン

具体的には、どのようにするのですかな?

塚口理央

塚口理央

例えば、バロンくんが将来、屋敷で働く人を雇ったとしましょう。
部下はお茶会の準備の基本を覚えましたが、準備が間に合わず、客人を待たせてしまうことがあります。

バロン

バロン

それなら、バロンが仕事の順番を決めて、教えてあげればよいのではないですかな?

塚口理央

塚口理央

それも一つの方法です。
ただ、自分で段取りを工夫する力を育てたいなら、「どの作業に時間が掛かっていますか」「準備を進めやすくするには、何を変えられそうですか」と尋ねてみます。

バロン

バロン

まず、本人に考えてもらうのですな。

塚口理央

塚口理央

はい。話を聞きながら状況を整理すると、本人が「食器を探すのに時間が掛かっている」「前日に確認しておけば慌てずに済みそうだ」と気づくかもしれません。
こうした気づきを、具体的な行動につなげていきます。

塚口理央

塚口理央

コーチングでは、特に次のような関わり方が大切です。

関わり方内容具体例
傾聴相手の話に耳を傾け、考えや状況を理解する話を途中で遮らず、どの作業で困っているのかを聞く
質問相手が自分で考え、気づくきっかけを作る「ほかに、どのような方法が考えられますか」と尋ねる
承認相手の努力や工夫、成長を具体的に認める「昨日は、自分から人数を確認できていましたね」と伝える
バロン

バロン

質問するだけでなく、話を聞いたり、できたことを認めたりするのですな。

塚口理央

塚口理央

そうです。「どうすればよいか、自分で考えなさい」と言って放置しても、十分な支援にはなりません。
考えを整理するのを手伝い、行動に必要な支援を行い、その結果も一緒に振り返ります。

バロン

バロン

自分で考えて動けるようになるまで、支えるのですな。

ここで覚えること

  • コーチングは、対話や質問を通じて本人の気づきや考えを引き出し、目標達成を支援する方法。
  • 傾聴、質問、承認などを通じて、本人が自分で考え、行動できるように支える。

GROWモデル

塚口理央

塚口理央

コーチングで対話を進めるための枠組みの一つに、GROWモデルがあります。
「グローモデル」と読み、次の4つの段階で考えます。

段階意味対話で確認すること
G:Goal目標何を達成したいのか
R:Reality / Resource現状・資源今はどのような状態か、目標達成に利用できるものは何か
O:Options選択肢目標に近づくために、どのような方法があるのか
W:Will実行の意思どの方法を選び、いつ、何を実行するのか
バロン

バロン

目標を決めて、今の状態や使えるものを確かめ、できそうな方法を考えるのですな。

塚口理央

塚口理央

はい。そして最後に、本人が実際に取り組む行動を決めます。
先ほどのお茶会の準備を例に、順番に見てみましょう。

塚口理央

塚口理央

最初はGoal、目標を明確にします。
ここでは、「次のお茶会では、どのような状態で客人を迎えたいですか」と尋ねます。
例えば、話し合って「来客の10分前までに、人数分のカップや席の準備を終える」という目標を決めます。

バロン

バロン

「しっかり準備する」よりも、何を目指すのかが分かりやすいですな。

塚口理央

塚口理央

そうですね。達成できたかを確かめられるように、目標を具体的にすることが大切です。

塚口理央

塚口理央

次はReality、現状を確認します。
「今は何時ごろ準備が終わっていますか」「どの作業に時間が掛かっていますか」と尋ねます。
すると、「直前まで食器を探している」「人数を確かめるのが遅く、途中で追加の準備が必要になる」といった状況が分かるかもしれません。

バロン

バロン

慌てている理由を、具体的に確かめるのですな。

塚口理央

塚口理央

はい。また、RではResource、目標達成に利用できる資源も確認します。
すでにできていることや、利用できる道具、協力してくれる人、使える時間などを確認します。

バロン

バロン

足りないものだけでなく、今使えるものも確認しておくのですな。

塚口理央

塚口理央

続いてOptions、選択肢を考えます。
「余裕を持って準備するには、どのような工夫ができそうですか」と尋ねます。
例えば、本人から次のような案が出てきたとしましょう。

準備を改善する方法の例

  • 前日までに参加人数を確認する。
  • 使う食器の保管場所を整理する。
  • 必要な準備をリストにして、確認しながら進める。
バロン

バロン

当日に急ぐだけでなく、前もってできることもありますな。

塚口理央

塚口理央

はい。最初の案だけで決めず、「ほかにはありますか」と問いかけることで、選択肢を広げられます。
そのうえで、実行しやすさや期待できる効果を一緒に考えます。

塚口理央

塚口理央

最後にWill、実行することを決めます。
「その中から、何を、いつから実行しますか」と尋ねます。
例えば、「今日、準備リストを作り、次のお茶会の前日に人数と必要な食器を確認する」と、具体的な行動を決めます。

バロン

バロン

「次は頑張ります」で終わらせないのですな。

塚口理央

塚口理央

はい。本人が実行する意思を持っているか、必要な支援はあるかも確認します。
そして、お茶会が終わった後に結果を振り返り、次の改善につなげます。

バロン

バロン

目標を決めるところから、実際にやってみるところまで、つながっているのですな。

塚口理央

塚口理央

そのとおりです。
なお、話している途中で新しい事情が分かれば、目標や現状の確認に戻ることもあります。4段階を手掛かりに、本人の考えを整理していきましょう。

ここで覚えること

  • GROWモデルは、目標→現状・資源→選択肢→実行の意思の4段階。
  • Realityでは現在の状況を確認し、Resourceでは目標達成に利用できる資源を確認する。
  • 最後は、本人が「何を、いつ実行するか」を具体的に決める。
  • 実行後の振り返りも、次の行動につなげるために大切。

メンタリング

塚口理央

塚口理央

次は、メンタリングです。
経験豊富な人が、助言や相談を通じて、相手のキャリア形成や精神面も含めた成長を継続的に支援する方法です。

塚口理央

塚口理央

支援する人をメンター、支援を受ける人をメンティといいます。

バロン

バロン

コーチングよりも、相談に乗るような感じですかな?

塚口理央

塚口理央

はい。違いをつかむうえでは、そのイメージでよいでしょう。
例えば、部下が「仕事には慣れてきましたが、この先、どのような仕事を目指せばよいか迷っています」と相談してきた場面を考えてください。

バロン

バロン

お茶会の準備を早く終わらせることとは、少し違う悩みですな。

塚口理央

塚口理央

そうですね。本人の希望や不安を聞き、これからの働き方を一緒に考えます。
「接客の腕を磨きたいのか」「人をまとめる立場になりたいのか」などを整理し、経験を踏まえて助言することが考えられます。

バロン

バロン

経験を話すのであれば、バロンの昔話が役立ちそうですぞ。

塚口理央

塚口理央

ええ。ただし、相手の相談が終わる前に、バロンくんの自伝が始まらないようにしてください。

バロン

バロン

まだ序章にも入っておりませんぞ。

塚口理央

塚口理央

序章があるのですね。
話す経験は、相手の参考になるものを選びましょう。例えば、人に仕事を任せるときに苦労したことや、失敗から学んだことなどです。

バロン

バロン

うまくいった話ばかりでなく、失敗した話も役立つのですかな?

塚口理央

塚口理央

はい。「自分も同じことで悩んだ」と知ることで、相手の不安が和らぐこともあります。
ただし、「自分がそうしたのだから、あなたも同じようにしなさい」と押し付けず、本人の希望や考えを尊重します。

塚口理央

塚口理央

企業では、新人や若手社員などに相談役を付ける、メンター制度を設けることがあります。
相談しやすい関係を作るために、直属の上司以外の先輩社員などがメンターを務めることもあります。

バロン

バロン

上司には言いにくいことも、別の先輩なら話せるかもしれませんな。

塚口理央

塚口理央

そうですね。仕事の進め方だけでなく、職場の人間関係や将来への不安なども相談の対象になります。
継続して話を聞き、信頼関係を築きながら、本人の成長を支えることが大切です。

ここで覚えること

  • メンタリングは、経験を生かした助言や相談を通じて、相手の成長を継続的に支援する方法。
  • 支援する人がメンター、支援を受ける人がメンティ。
  • 業務上の助言に加え、キャリア形成や精神面も支援する。

相手の状況に応じて使い分ける

塚口理央

塚口理央

ここまで、ティーチング、コーチング、メンタリングを取り上げました。
大切なのは、相手の経験や困っている内容に応じて、関わり方を選ぶことです。

バロン

バロン

コーチングを覚えたからといって、何でも質問すればよいわけではないのですかな?

塚口理央

塚口理央

はい。例えば、初めて働く人が「お茶の用意の仕方が分かりません」と言ったときに、「あなたはどう思いますか」と尋ね続けたら、どうでしょうか。

バロン

バロン

考えるための知識がないので、困ってしまいそうですぞ。

塚口理央

塚口理央

そうですね。その場合は、ティーチングで基本的な知識や手順を教えることが役立ちます。
その後、仕事に慣れてきて、自分で段取りを改善してほしいときには、コーチングを活用できます。

バロン

バロン

まずやり方を覚えてもらい、できるようになってきたら、自分で工夫する力も育てるのですな。

塚口理央

塚口理央

はい。そして、将来の働き方や職場での悩みを抱えているときには、メンタリングによる支援が考えられます。
同じ人に対しても、そのときの状況によって、必要な関わり方は変わります。

塚口理央

塚口理央

また、これらの方法を組み合わせることもできます。
メンタリングで「将来は、お茶会の運営をまとめる立場になりたい」という希望が見えてきたら、コーチングで「そのために、次のお茶会では何に取り組むか」を具体化する、といった使い方です。

バロン

バロン

相談に乗って終わりではなく、次の行動を考えるところにもつなげられるのですな。

塚口理央

塚口理央

そうです。
コーチングでもメンタリングでも、本人の意思を尊重することが大切です。相手の状況を知り、必要な支援を考えましょう。

ここで覚えること

  • 知識や手順を身に付けてもらうには、ティーチングが役立つ。
  • 自分で考えて行動する力を育てるには、コーチングが役立つ。
  • キャリアや悩みも含めて継続的に支えるには、メンタリングが役立つ。
  • 相手の状況に応じて、複数の方法を組み合わせる。

今日のまとめ

塚口理央

塚口理央

今回取り上げた3つの方法は、いずれも人の成長を支えるためのものです。
それぞれの特徴を、具体例と一緒に整理しておきましょう。

方法主な関わり方今回の具体例
ティーチング知識や技術、手順を直接教える初めて働く人に、お茶の用意の仕方を教える
コーチング対話や質問によって、本人の気づきや考えを引き出すお茶会の準備を改善する方法を本人が考え、実行できるように支える
メンタリング経験を生かした助言や相談を通じて、継続的に成長を支える将来の働き方や仕事への不安について相談に乗る
バロン

バロン

同じ部下を育てる場合でも、関わり方が違うのですな。

塚口理央

塚口理央

はい。コーチングでは、本人が自分で考え、行動できるように支援します。
その対話を進める枠組みの一つが、GROWモデルです。

GROWモデル

  • Goal:目標――何を達成したいのかを明確にする。
  • Reality / Resource:現状・資源――現在の状況と、目標達成に利用できるものを確認する。
  • Options:選択肢――取り組めそうな方法を考える。
  • Will:実行の意思――実際に行うことと、その時期を決める。
塚口理央

塚口理央

メンタリングでは、メンターがメンティを支援するという関係も覚えておきましょう。
仕事上の助言に加えて、キャリア形成や精神面も含め、継続的に成長を支えることが特徴です。

バロン

バロン

経験があるからといって、自分のやり方を押し付けないことも大切でしたな。

塚口理央

塚口理央

そのとおりです。経験を伝える場合も、相手の希望や状況に合っているかを考えます。
また、基礎知識が不足している人には、必要なことを直接教えるティーチングも大切です。

バロン

バロン

「教える」「考えを引き出す」「相談に乗って成長を支える」を、うまく使い分けたいですな。

塚口理央

塚口理央

はい。試験では、具体的な働きかけを読んで、どの方法にあたるかを判断できるようにしておきましょう。
それでは、確認問題です。

確認問題

問1 コーチングの説明として、最も適切なものはどれですか?
問2 初めて業務を担当する社員が、使用する道具や作業の手順を知らない。この社員に基本を身に付けてもらうための働きかけとして、最も適切なものはどれですか?
問3 GROWモデルの基本的な流れとして、最も適切なものはどれですか?
問4 GROWモデルの「Will」にあたる働きかけとして、最も適切なものはどれですか?
問5 メンタリングの例として、最も適切なものはどれですか?
問6 メンターとメンティの関係として、最も適切なものはどれですか?
問7 人材育成の方法の使い方として、最も適切なものはどれですか?