コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスは、企業統治のことで、株主などの利害関係者の立場を踏まえ、経営を監視・監督して、企業経営の健全性や透明性を確保する仕組みです。
最終更新日:2026年10月5日
このページで覚えること
このページでは、次の3点を押さえます。
- コーポレートガバナンスの目的と、強化するための具体的な取組
- ステークホルダ、コンプライアンス、ビジネスと人権の考え方
- コーポレートガバナンス・コードの役割
導入トーク

葛城涼子
今回は、コーポレートガバナンスについて学習します。

葛城涼子
ESG投資の説明で、少し紹介していますね。
覚えていますか?

葛城涼子
そのときは、まず環境、社会、ガバナンスの3つを覚えましょうとお話ししましたね。
ガバナンスについては、まだ詳しく説明していませんから、意味が曖昧でも仕方ないかもしれませんね。

葛城涼子
その切替えの速さは、バロンくんの長所の一つですね。

葛城涼子
それでは、今日も楽しく学習していきましょう。
今回は、バロンくんがタコの唐揚げ専門店を経営する例で考えます。

葛城涼子
ただし、おいしい唐揚げを作るだけでは終わりませんよ。会社を経営する立場として、考えてもらいます。
STEP 1
コーポレートガバナンス

葛城涼子
コーポレートガバナンスは、日本語では企業統治といいます。
経営を監視・監督する仕組みを整え、企業経営の健全性や透明性を確保することが重要になります。

葛城涼子
はい。それも大切な役割です。
例えば、バロンくんがタコの唐揚げ専門店を運営する株式会社を作るとしましょう。

葛城涼子
そこで、香苗先生に株主として出資してもらい、バロンくんが経営を担当することにします。

葛城涼子
新商品の開発は大切ですね。
でも、売れる見込みや使える予算を考えず、開業資金の大半を試作に使ってしまったら、どうでしょうか。

葛城涼子
「家賃や従業員の給料はどうするのですか」と、確認されるでしょうね。

葛城涼子
今回は、出資したお金が会社のために適切に使われているかを確認しているのです。
経営者に任せることと、何も確認しないことは違います。

葛城涼子
株式会社では、株主が出資し、経営者に経営を任せることができます。
以前、株式会社の学習でも触れましたが、このように、会社を所有する株主と、実際に経営する経営者が分かれることを、所有と経営の分離といいます。
そのため、経営者が会社や株主の利益を損なう行動をしていないか、経営の方針や実績を確認する仕組みが必要です。

葛城涼子
そのとおりです。
以前学習した、株主総会で取締役を選任・解任する仕組みも、株主が経営を監督するための重要な手段です。

葛城涼子
挑戦そのものをやめる必要はありません。開発の目的、必要な予算、売上の見込みなどを説明し、適切に判断できるようにすることが大切です。
コーポレートガバナンスには、不正や暴走を防ぐとともに、適切な経営判断を支え、会社の持続的な成長につなげる役割もあります。
ここで覚えること
- コーポレートガバナンスは、企業経営を監視・監督する仕組み。
- 経営の健全性や透明性を確保し、企業の持続的な成長につなげる。
- 株主と経営者が分かれる「所有と経営の分離」があるからこそ、経営を監督する仕組みが重要になる。
- 株主総会による取締役の選任・解任も、経営を監督する手段の一つ。
STEP 2
ステークホルダ

葛城涼子
会社を経営するときに考えるべき相手は、株主だけではありません。
企業活動に関わり、その影響を受けたり、影響を与えたりする人や組織を、ステークホルダといいます。日本語では、利害関係者です。

葛城涼子
はい。タコの唐揚げ専門店なら、次のような人や組織が考えられます。
| ステークホルダ | 店舗の例 | 関係することの例 |
|---|---|---|
| 株主 | 出資する香苗先生 | 会社の成長、企業価値、配当 |
| 従業員 | 調理や接客を担当する人 | 給料、安全な職場、適切な労働時間 |
| 顧客 | 唐揚げを購入する人 | 商品の安全性、品質、価格 |
| 取引先 | タコや油を納入する業者 | 公正な取引、代金の支払い |
| 債権者 | 会社に融資する金融機関など | 貸したお金の返済 |
| 地域社会 | 店舗の近隣住民など | 騒音、におい、ごみへの対応 |

葛城涼子
そうですね。
例えば、利益を増やすために従業員へ無理な働き方をさせたり、取引先への支払いを後回しにしたりすれば、信頼関係が崩れてしまいます。

葛城涼子
はい。株主の利益を考えることは重要ですが、ほかのステークホルダの権利や立場にも配慮する必要があります。
こうした関係を大切にすることが、会社の継続的な成長にもつながります。
ここで覚えること
- ステークホルダは、企業活動に関わる利害関係者。
- 株主だけでなく、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会なども含まれる。
STEP 3
コーポレートガバナンスを強化する取組

葛城涼子
ここからは、コーポレートガバナンスを強化する具体的な取組を見ていきましょう。
特に、経営と執行の分離と、独立性の高い社外取締役の選任は押さえておきたい内容です。

葛城涼子
簡単に整理すると、経営は「会社として何をするかを決め、業務を監督すること」、執行は「決めた方針に沿って実際に仕事を進めること」です。
実際に業務を進めることを、業務執行といいます。

葛城涼子
例えば、取締役会が新商品の開発方針や予算を決め、担当者がその範囲で仕入れや試作、販売を進める、といった分担です。

葛城涼子
はい。そのための方法の一つが、執行役員制度です。
業務執行を担う執行役員を置き、取締役会が重要な経営判断や監督に力を注げるようにします。
| 役割 | 主な働き |
|---|---|
| 取締役会 | 重要な経営方針を決定し、業務執行を監督する |
| 執行役員 | 決定された方針に従って、担当する業務を執行する |

葛城涼子
このように役割を分けることで、取締役会は日々の業務執行そのものよりも、重要な経営判断や、執行役員が適切に業務を行っているかの監督に力を注ぎやすくなります。
これが、経営と執行の分離がコーポレートガバナンスの強化につながる理由です。

葛城涼子
そのとおりです。経営と執行を分けるだけで、すべての問題を防げるわけではありません。
そこで重要になるのが、独立性の高い社外取締役を選任することです。

葛城涼子
社外取締役は、社外の立場から経営について助言や監督を行う取締役です。
経営陣などとの利害関係に左右されにくい人が取締役会に加わることで、経営判断そのものについても、客観的な立場から意見や監督を行いやすくなります。

葛城涼子
はい。こうした仕組みを組み合わせることで、経営の監督機能を強化していきます。
試験では、執行役員制度の導入による経営と執行の分離という表現も押さえておきましょう。

葛城涼子
味を褒めてくれるだけでは、経営の監督になりませんよ。
「この開発費は妥当ですか」「売上の見込みには根拠がありますか」と、必要な意見を言えることが大切です。

葛城涼子
耳の痛い意見も、会社のためになることがありますからね。

葛城涼子
ほかにも、情報開示や監査の充実など、次のような取組が役立ちます。
| 取組 | 目的 |
|---|---|
| 情報開示の充実 | 業績や経営方針、リスクなどを示し、経営の透明性を高める |
| 監査体制の整備 | 取締役の職務や会計情報などが適切かを確認する |
| 内部通報制度の整備 | 不正などの情報を受け付け、調査や是正につなげる |

葛城涼子
そのとおりです。
試験では、単に会社を大きくしたり売上を増やしたりする施策と、経営の監督機能や透明性を高める施策を区別できるようにしましょう。
ここで覚えること
- 執行役員制度による経営と執行の分離は、取締役会が経営判断や監督に力を注ぎやすくし、監督機能の強化につながる。
- 独立性の高い社外取締役は、経営陣などとの利害関係に左右されにくい立場から経営を監督する。
- 情報開示、監査、内部通報制度などの充実も重要。
STEP 4
コンプライアンスと内部統制との関係

葛城涼子
次に、コンプライアンスを確認しましょう。
一般に法令遵守と訳されますが、企業活動では、法令に加えて社内規程や社会規範、企業倫理などを守ることも含めて考えます。

葛城涼子
はい。
タコの唐揚げ専門店なら、食品の安全に関するルールを守る、原材料の表示を偽らない、従業員の労働時間を適切に管理する、といったことが考えられます。

葛城涼子
また、顧客から預かった個人情報を適切に扱うことや、取引先との約束を誠実に守ることも大切です。

葛城涼子
そのとおりです。内部統制の目的には、事業活動に関わる法令等の遵守がありましたね。
例えば、食品の表示を担当者とは別の人が確認する手順を設ければ、誤りや不正を防ぎやすくなります。

葛城涼子
関係を整理すると、次のようになります。
| 用語 | 注目すること |
|---|---|
| コーポレートガバナンス | 経営を適切に監視・監督し、健全性や透明性を確保する仕組み |
| コンプライアンス | 法令や社内規程、社会規範、企業倫理などを守ること |
| 内部統制 | 法令等の遵守や報告の信頼性などを実現するため、業務に組み込む仕組み |

葛城涼子
そうですね。大まかに整理すると、コーポレートガバナンスは「経営をチェックする話」、コンプライアンスは「ルールを守る話」、内部統制は「ルールを守ったり、ミスや不正を防いだりするために、仕事の中へ仕組みを入れる話」と考えると分かりやすいでしょう。

葛城涼子
はい。その整理で押さえておきましょう。
これらは別々のものですが、実際の企業経営では互いに関係しています。
ここで覚えること
- コンプライアンスは法令遵守であり、社内規程や社会規範、企業倫理なども含めて考える。
- 内部統制は、コンプライアンスを実現するための仕組みとしても役立つ。
- コーポレートガバナンスでは、こうした取組を経営として適切に監督する。
STEP 5
ビジネスと人権

葛城涼子
企業が責任ある経営を行ううえでは、「ビジネスと人権」という考え方も重要です。

葛城涼子
はい。
ビジネスと人権は、企業活動に関わる人々の人権を尊重し、人権侵害を引き起こしたり、助長したりしないように取り組むべきであるという国際的な考え方のことです。

葛城涼子
はい。例えば、差別やハラスメントを防ぐこと、安全に働ける環境を整えることなどが含まれます。
そして、目を向ける範囲は、自社の従業員だけではありません。

葛城涼子
例えば、お店で使うタコの仕入先や、その先の加工場などで働く人たちです。
原材料の調達から製造、流通、販売などへ続く一連のつながりを、サプライチェーンといいます。

葛城涼子
はい。
「ビジネスと人権」では、自社だけでなく、そのサプライチェーンで人権上の問題が起きていないかにも目を向けます。

葛城涼子
もし、安いタコを供給している業者の加工場で、強制労働や児童労働が行われていたら、価格だけを見て取引を続けてよいとはいえません。

葛城涼子
そうです。取引先などでどのような問題が起きているかを把握し、問題があれば防止や改善に取り組むことが大切です。

葛城涼子
こうした取組に関係する重要な用語が、人権デューデリジェンスです。

葛城涼子
英語の意味から考えてみましょう。
dueには「必要な」「当然払うべき」、diligenceには「注意深く取り組むこと」といった意味があります。
そのため、デューデリジェンスは、必要な注意を払いながら、問題がないかを調べ、対応していくイメージで考えると分かりやすいでしょう。

葛城涼子
はい。大まかにはその理解で大丈夫です。
具体的には、自社や取引先などでの人権への悪影響を特定し、防止・軽減に取り組み、その効果を確認して、対応状況を説明・開示していく一連の取組です。

葛城涼子
そのとおりです。
一度確認して終わりではなく、継続して取り組むことが大切です。
また、企業として人権を尊重する方針を示すことや、自社が人権侵害を引き起こしたり助長したりした場合に、被害の救済に取り組むことも重要です。

葛城涼子
なお、人権への配慮は、ESGのS(社会)に関わる内容です。
その取組を経営方針に組み込み、実施状況を監督することは、G(ガバナンス)ともつながります。
ここで覚えること
- 「ビジネスと人権」は、企業活動に関わる人々の人権を尊重するという考え方。
- 自社だけでなく、取引先やサプライチェーンでの人権への影響にも目を向ける。
- 人権デューデリジェンスでは、人権への悪影響の特定、防止・軽減、効果の確認、説明・開示を継続して行う。
STEP 6
コーポレートガバナンス・コード

葛城涼子
最後に、コーポレートガバナンス・コードを紹介します。
コーポレートガバナンス・コードは、金融庁と東京証券取引所が公表している、上場企業の企業統治に関する指針です。
上場企業が実効性のある企業統治を行うための、主要な原則がまとめられています。

葛城涼子
はい。その理解で大丈夫です。
現在のコーポレートガバナンス・コードには、4つの基本原則があります。
| 基本原則 | 主な内容 |
|---|---|
| 株主の権利・平等性の確保、株主との対話 | 株主が適切に権利を行使できるようにし、建設的な対話を行う |
| 株主以外のステークホルダーとの適切な協働 | 従業員、顧客、取引先、地域社会などの立場を尊重し、協力する |
| 適切な情報開示と透明性の確保 | 業績や経営方針、リスクなどを、正確で分かりやすく開示する |
| 取締役会等の責務 | 経営の方向性を示し、適切な挑戦を支え、経営陣を監督する |

葛城涼子
そうですね。会社の持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上を目指すための原則です。

葛城涼子
また、このコードでは、コンプライ・オア・エクスプレインという考え方を採用しています。

葛城涼子
英語の意味から考えると分かりやすいですよ。
complyは「従う、遵守する」、explainは「説明する」という意味です。
つまり、原則を遵守するか、遵守しない場合はその理由を説明する、という考え方です。

葛城涼子
はい。会社の規模や事業内容などは異なりますから、すべての会社が同じ方法で原則を実施する必要はありません。
ただし、原則を実施しない場合には、株主などが理解できるように、その理由を十分に説明する必要があります。

葛城涼子
そのとおりです。
こうした説明や対話を通じて、実際に機能するコーポレートガバナンスを目指します。
ここで覚えること
- コーポレートガバナンス・コードは、金融庁と東京証券取引所が公表している、上場企業の企業統治に関する指針。
- コンプライ・オア・エクスプレインは、原則を遵守するか、遵守しない場合はその理由を説明するという考え方。
STEP 7
今日のまとめ

葛城涼子
今回は、企業経営を監視・監督する仕組みである、コーポレートガバナンスを学習しました。
経営の健全性や透明性を確保し、会社が継続して成長できるようにすることが大切です。

葛城涼子
まず、関連する用語を整理しましょう。
| 用語 | 押さえておきたい内容 |
|---|---|
| コーポレートガバナンス | 経営を監視・監督し、健全性や透明性を確保する仕組み |
| ステークホルダ | 株主、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会などの利害関係者 |
| コンプライアンス | 法令や社内規程、社会規範、企業倫理などを守ること |
| ビジネスと人権 | 自社や取引先など、事業に関わる人々の人権を尊重すること |
| コーポレートガバナンス・コード | 金融庁と東京証券取引所が公表している、上場企業の企業統治に関する指針 |

葛城涼子
はい。
そして、ガバナンスを強化する具体策として、執行役員制度による経営と執行の分離と、独立性の高い社外取締役の選任を押さえましょう。

葛城涼子
情報開示や監査、内部通報制度の充実も、経営を適切にチェックするために役立ちます。
以前学んだ内部統制も、法令等の遵守や報告の信頼性などを実現するための仕組みとして関係しています。

葛城涼子
そのとおりです。
人権への配慮についても、自社だけでなくサプライチェーンに目を向け、問題の把握や改善を継続することが重要です。

葛城涼子
それなら、前向きに検討してもらえそうですね。

葛城涼子
それは試食の感想ですね。経営の報告も忘れないでください。
それでは、確認問題です。
STEP 8
確認問題
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