財務指標
財務指標は、財務諸表の数値を使って、企業の安全性や収益性、効率性などを分析するための指標です。安全性の指標には自己資本比率や流動比率、収益性の指標には売上高利益率や自己資本利益率(ROE)、総資産利益率(ROA)、効率性の指標には資本回転率などがあります。
最終更新日:2026年10月6日
このページで覚えること
このページでは、次の3点を押さえます。
- 財務指標を、安全性・収益性・効率性の視点で整理する。
- 売上高利益率、自己資本比率、流動比率、ROE、ROA、資本回転率の意味と計算方法を理解する。
- 一つの指標だけで判断せず、複数の指標を組み合わせて企業の状態を読み取る。
導入トーク

布施香苗
今回は、財務指標について学習します。

布施香苗
準備がいいですね。
今回も、私が出資し、バロンくんが経営するという設定の、タコの唐揚げ専門店を例にします。

布施香苗
涼子先生から、全部聞いていますよ。
私のことを「お金に細かい」と話していたことも含めて。

布施香苗
ええ。ほかにも何か、心当たりがありますか?

布施香苗
そういうことにしておきましょう。
では今日は、その細かいお金の話に、しっかり付き合ってくださいね。

布施香苗
それでは、財務指標とはどのようなものか、見ていきましょう。
STEP 1
財務指標

布施香苗
財務指標は、財務諸表に記載された売上高や利益、資産、負債などの数値を使って、企業の状態を分析するためのものです。
分かりやすいのが、売上高利益率です。

布施香苗
売上高に対する利益率と考えるとよいですね。
タコの唐揚げ専門店の売上高が、1,000万円だったとします。
それに対して、利益が100万円だったとしましょう。
売上高利益率は、売上高に対して、どれくらいの利益が出ているかを見る指標なので、次の式で計算します。
- 売上高利益率(%)=利益 ÷ 売上高 × 100

布施香苗
そのとおりです。
バロンくんは電卓をたたくのが上手ですね。

布施香苗
その手で、どうやって電卓をたたいているのか、とても興味深いですね。

布施香苗
売上高利益率は、収益性を見るのに使用します。

布施香苗
簡単にいえば、どれくらい利益を上げる力があるかということです。
例えば、売上高が1,000万円だとして、売上高利益率が10%の場合は100万円の利益ですが、売上高利益率が50%であれば、500万円の利益になります。

布施香苗
そうですね。
ただ、企業の収益性を見るときは、利益の金額だけでなく、その利益が売上高の何%に当たるのかを見ることも大切です。

布施香苗
例えば、同じ100万円という利益であっても、売上高利益率が10%と50%では、捉え方が変わります。
売上高利益率が10%なら、100万円の利益を得るために1,000万円を売り上げたことになります。
一方、50%なら、200万円の売上高で100万円の利益を得たことになります。

布施香苗
そのとおりです。
このように、金額だけでは分かりにくいことも、数字同士の関係を割合などで表すことで比較しやすくなるのが、財務指標の特徴です。

布施香苗
はい。
そして、会社を見るときに気になるのは、利益だけではありません。
例えば、利益が出ていても、借入金が多くて返済が大変かもしれません。
また、たくさんの資産を持っていても、それを売上につなげられていないかもしれません。
そこで、財務指標はいくつかの視点に分けて考えます。
今回は、安全性・収益性・効率性の3つを見ていきましょう。
| 視点 | 何を見るのか | 今回学習する主な指標 |
|---|---|---|
| 安全性 | 支払いや返済に対応できるか、財務が安定しているか | 自己資本比率、流動比率 |
| 収益性 | 売上高や資本、資産に対して、どれくらい利益を上げているか | 売上高利益率、ROE、ROA |
| 効率性 | 資本や資産を、どれくらい効率よく売上につなげているか | 資本回転率 |

布施香苗
はい。
一つの数字だけを見るのではなく、何を知りたいのかに合わせて財務指標を使い分けることが大切です。
まずは、会社の財務が安定しているかを見る、安全性の指標から確認していきましょう。
ここで覚えること
- 財務指標は、財務諸表の数値を組み合わせて、企業の状態を分析するためのもの。
- 売上高利益率=利益 ÷ 売上高 × 100。
- 金額だけでなく、割合などで表すことで企業の状態を比較しやすくなる。
- 今回は、財務指標を安全性・収益性・効率性の3つの視点で整理する。
STEP 2
安全性の指標

布施香苗
まずは、安全性の指標である自己資本比率です。

布施香苗
はい。
会社が事業に使う資金は、大きく自己資本と他人資本に分けられます。
この自己資本と他人資本を合わせたものが、総資本です。

布施香苗
そのとおりです。
そして、自己資本比率は、その総資本のうち、自己資本がどれくらいの割合を占めているかを表す指標です。
- 自己資本比率(%)=自己資本 ÷ 総資本 × 100

布施香苗
例えば、総資本が1,000万円で、そのうち自己資本が600万円なら、自己資本比率は60%になります。

布施香苗
ここで、自己資本と他人資本の違いを見てみましょう。
自己資本は、株主からの出資や、会社がこれまでに蓄積した利益など、基本的に返済する必要のない資本です。
一方、他人資本は、銀行からの借入金など、将来返済する必要のある資本です。

布施香苗
はい。
先ほどの例では、総資本1,000万円のうち自己資本が600万円なので、残りの400万円が他人資本ということになります。
つまり、会社の資金の60%は返済する必要のない自己資本で、40%は借入金などの他人資本でまかなっているということです。

布施香苗
そのとおりです。
一般に、自己資本比率が高いほど、他人資本への依存が小さく、財務の安全性が高いと考えられます。
反対に、自己資本比率が低い場合は、借入金などへの依存が大きくなります。

布施香苗
はい。
そのため、自己資本比率は、会社の財務がどれくらい安定しているかを見るための指標として使われます。

布施香苗
次は、流動比率です。
こちらは、企業の短期的な支払能力を見る指標です。

布施香苗
はい。
流動比率は、次の式で計算します。
- 流動比率(%)=流動資産 ÷ 流動負債 × 100

布施香苗
ところでバロンくん、流動資産と流動負債は覚えていますか?

布施香苗
はい。その理解で大丈夫です。
では、流動資産が300万円、流動負債が200万円だったとしましょう。

布施香苗
そうすると、300万円 ÷ 200万円 × 100で、流動比率は150%になります。

布施香苗
近いうちに支払わなければならない200万円に対して、流動資産が300万円あるということです。
ですから、短期的な支払いには比較的余裕があると考えられます。

布施香苗
そうですね。
例えば、流動資産が100万円しかないのに、流動負債が200万円あれば、流動比率は50%です。
近いうちに200万円を支払わなければならないのに、それに対応する流動資産が100万円しかありません。

布施香苗
はい。
たとえ利益が出ている会社でも、必要なときに支払いができなければ、会社を続けられなくなることがあります。
そのため、一般に流動比率が高いほど、短期的な支払能力が高いと考えられます。

布施香苗
そのとおりです。
どちらも安全性の指標ですが、見ているところが違います。
ここで覚えること
- 自己資本比率=自己資本 ÷ 総資本 × 100。
- 自己資本比率が高いほど、一般に財務の安全性が高い。
- 流動比率=流動資産 ÷ 流動負債 × 100。
- 流動比率が高いほど、一般に短期的な支払能力が高い。
STEP 3
収益性の指標

布施香苗
次は、収益性の指標です。
さきほど説明した売上高利益率に加えて、ROEとROAを押さえましょう。

布施香苗
はい。まずは、略語を分解してみると覚えやすいですよ。
ROEは、Return on Equityの略です。
Returnは「利益」、Equityは「株主資本」や「自己資本」という意味なので、ROEは日本語で自己資本利益率といいます。

布施香苗
そのとおりです。
一方、ROAは、Return on Assetsの略です。
Assetsは「資産」という意味です。
貸借対照表では、総資産と総資本の金額は一致するので、ROAは総資産利益率や総資本利益率と呼ばれます。

布施香苗
はい。
まずは、ROEは自己資本、ROAは総資産と覚えておきましょう。

布施香苗
では、ROEから見ていきます。
ROEは、自己資本に対して、どれくらい利益を上げたかを見る指標です。
- ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

布施香苗
ROEでは、利益として当期純利益を使います。

布施香苗
ROEは、株主から見た収益性を考える指標だからです。
会社が売上を上げても、そこからさまざまな費用や税金を支払います。
それらを差し引いて、最終的に会社に残る利益が当期純利益です。
当期純利益は、会社に利益として蓄積されたり、株主への配当を考えたりするときにも関係するため、株主にとって重要な利益になります。

布施香苗
はい。
そのため、ROEは株主や投資家が企業の収益性を見るときに重視する指標の一つです。
例えば、自己資本が500万円で、当期純利益が50万円なら、50万円 ÷ 500万円 × 100で、ROEは10%です。

布施香苗
次は、ROAです。
ROAは、総資産に対して、どれくらい利益を上げたかを見る指標です。
- ROA(%)=利益 ÷ 総資産 × 100

布施香苗
よく気が付きましたね。
ROAでは、当期純利益を使う場合もあれば、営業利益や経常利益を使う場合もあります。
そのため、問題を解くときは、どの利益を使うのかを確認することが大切です。

布施香苗
そのとおりです。

布施香苗
会社が事業に使っている資産は、株主からの自己資本だけで用意したものではありません。
銀行からの借入金など、他人資本で調達した分も含まれています。
ROAでは、そうして用意した会社全体の資産を使って、どれくらい利益を上げているかを見るため、総資産を使います。

布施香苗
はい。
そのため、銀行にとっても、自分たちが貸したお金を含め、会社が調達した資金を使ってどれくらい利益を上げているかは、参考になる情報です。
もちろん、銀行はROAだけで判断するわけではなく、先ほど学習した自己資本比率や流動比率なども合わせて確認します。

布施香苗
はい。その整理で押さえておきましょう。
ここで覚えること
- ROE(自己資本利益率)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100。
- ROA(総資産利益率・総資本利益率)=利益 ÷ 総資産 × 100。
- ROEは株主から見た収益性、ROAは会社全体の資産を使った収益性を見る。
- ROAでは、当期純利益、営業利益、経常利益など、使う利益を確認する。
STEP 4
効率性の指標

布施香苗
次は、効率性の指標である資本回転率です。

布施香苗
そうですね。
まずは、「回転」という言葉のイメージから考えてみましょう。
例えば、100万円のお金が手元にあるとします。
その100万円を使って、タコの唐揚げの材料を買います。

布施香苗
はい。
すると、100万円のお金が、100万円分の材料に変わります。
その材料を使ってタコの唐揚げを作り、100万円で売ったとしましょう。

布施香苗
はい。
資本を使って商品を作り、それを売上につなげて、また資金として戻ってくる。
このような流れを、資本が回転すると考えます。

布施香苗
そのとおりです。
資本回転率は、資本を使って、どれくらい売上を上げたかを見る指標です。
ここでは、会社全体の資本を対象にした、総資本回転率を取り上げます。
総資本と総資産の金額は一致するため、総資産回転率とも呼ばれます。
- 総資本回転率(回)=売上高 ÷ 総資本

布施香苗
例えば、総資本が1,000万円の会社が、1年間に2,000万円を売り上げたとします。

布施香苗
そうすると、2,000万円 ÷ 1,000万円で、総資本回転率は2回です。

布施香苗
はい。
一般に、同じ条件で比べるなら、総資本回転率が高いほど、資本を効率よく売上につなげていると考えられます。

布施香苗
そうですね。
総資本回転率は、総資本の何倍の売上高を上げたかを見るので、100を掛けず、単位は回で表します。

布施香苗
そのとおりです。
ただし、総資本回転率で見ているのは売上高です。
回転率が高いからといって、それだけで利益も多いとは限りません。
利益については、先ほど学習した売上高利益率やROE、ROAなどの収益性の指標を使って確認します。
ここで覚えること
- 総資本回転率=売上高 ÷ 総資本。
- 総資本回転率は、資本をどれくらい効率よく売上につなげているかを見る指標。
- 単位は%ではなく、回で表す。
STEP 5
今日のまとめ

布施香苗
今回学習した財務指標を整理しましょう。
財務指標は、計算式だけを覚えるのではなく、何を調べるための指標なのかと結び付けて覚えることが大切です。
| 分類 | 指標 | 何を見るのか | 計算式 |
|---|---|---|---|
| 収益性 | 売上高利益率 | 売上高に対して、どれくらい利益を上げたか | 利益 ÷ 売上高 × 100 |
| 安全性 | 自己資本比率 | 総資本に対して、自己資本がどれくらいあるか | 自己資本 ÷ 総資本 × 100 |
| 安全性 | 流動比率 | 流動負債に対して、流動資産がどれくらいあるか | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 |
| 収益性 | ROE | 自己資本に対して、どれくらい当期純利益を上げたか | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 |
| 収益性 | ROA | 総資産に対して、どれくらい利益を上げたか | 利益 ÷ 総資産 × 100 |
| 効率性 | 総資本回転率 | 総資本をどれくらい売上につなげたか | 売上高 ÷ 総資本 |

布施香苗
はい。
例えば、ROEとROAはどちらも収益性を見る指標ですが、比べる相手が違います。
ROEのEはEquityなので自己資本、ROAのAはAssetsなので総資産です。

布施香苗
そのとおりです。
また、安全性の指標でも、自己資本比率と流動比率では見ているところが違います。
自己資本比率は、借入金などの他人資本にどれくらい依存しているかを見るときに役立ちます。
流動比率は、近いうちの支払いに対応できるかを見る指標です。

布施香苗
はい。
そして、総資本回転率は収益性ではなく効率性の指標です。
総資本を使って、どれくらい売上を上げているかを見ます。
売上高に対する利益を見る売上高利益率とは、目的が違います。

布施香苗
そのとおりです。
一つの財務指標だけで会社の状態をすべて判断することはできません。
収益性、安全性、効率性など、複数の視点から確認することが大切です。
また、企業によって事業の内容や規模は異なります。
同じ業種の企業と比べたり、自社の過去の数値と比べたりすることで、財務指標をより役立てることができます。

布施香苗
はい。
試験では、指標の名前と意味の対応だけでなく、問題文に示された数値を使って計算できるようにしておきましょう。
割合を求める指標では100を掛けますが、総資本回転率は回で表すので100を掛けません。

布施香苗
数字を見せるだけではなく、きちんと説明してくださいね。

布施香苗
はい。
それでは、確認問題に進みましょう。
STEP 6
確認問題
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